東京高等裁判所 平成5年(行ケ)142号 判決 1996年12月25日
愛知県名古屋市東区徳川二丁目2番8号
原告
株式会社中日本システム
代表者代表取締役
小柳正信
愛知県一宮市大字定水寺字塚越20番地
原告
株式会社バルダン
代表者代表取締役
柴田義夫
原告ら訴訟代理人弁理士
足立勉
同訴訟復代理人弁理士
森泰比古
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
被告
特許庁長官 荒井寿光
指定代理人
小原英一
同
幸長保次郎
同
伊藤三男
主文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告ら
特許庁が、平成1年審判第2536号事件について、平成5年4月30日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告らは、リコー電子工業株式会社と三者共同で、昭和61年12月2日、名称を「刺繍模様作成装置」とする発明(以下「本願発明」という。)につき特許出願をした(特願昭61-287548号)が、昭和63年12月6日に拒絶査定を受けたので、平成元年2月16日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成1年審判第2536号事件として審理し、平成2年1月11日に出願公告をした(特公平2-1516号)が、異議申立てがなされた。
リコー電子工業株式会社は、本願発明につき特許を受ける権利の持分を放棄し、原告らは、平成2年10月11日、その旨を被告に届け出た。
特許庁は、さらに審理したうえ、平成5年4月30日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年7月19日、原告らに送達された。
2 本願発明の特許請求の範囲の記載
刺繍模様を構成する際の最小単位となる文字、記号等のパターンを複数記憶しているパターン記憶手段と、
該パターン記憶手段の記憶している複数のパターンの中から所望のパターンを選択するパターン選択手段と、
該パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付け、該関係付けた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段と、
該グループ定義手段の定義した各グループについて、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、
前記グループ定義手段により定義された各グループに属する総てのパターンを、前記定められた座標原点に従い、前記形式決定手段により各グループについて決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段と、
前記二次元表示画面上に作成されたパターンの形態および位置関係に基づいて、刺繍ミシンの実行する一針データを作成する一針データ作成手段と、
を備えた刺繍模様作成装置。
3 審決の理由の要点
審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭60-119981号公報(以下「引用例1」といい、その発明を「引用例発明1」という。)及び特開昭60-246785号公報(以下「引用例2」といい、その発明を「引用例発明2」という。)に記載された技術から当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
第3 原告ら主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、引用例1、2の各記載事項の認定は認める。本願発明と引用例発明1との一致点、相違点の認定については、後記取消事由1記載の点を争い、その余は認め、相違点の判断は争う。
審決は、本願発明の技術事項の認定を誤ったため、本願発明と引用例発明1との一致点を誤認し(取消事由1)、相違点の判断を誤り(取消事由2)、その結果、誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本願発明の技術事項の認定の誤り、本願発明と引用例発明1との一致点の誤認)
(1) 本願発明は、布地に縫目を利用して所望の模様を形成する刺繍ミシン用の刺繍データを作成する刺繍模様作成装置に関するものである。
従来の刺繍模様作成装置では、小さな模様を構成している複数のパターンについて、常に各パターン毎に加工を実行する、いわゆるパターン毎の刺繍模様の作成を繰り返し実行しなければならず、極めて多くの時間を要し、模様作成の効率が低いという問題があった。本願発明は、これを解決するため、複数のパターンからなる小さな模様を一つの完成した模様として扱うことで刺繍模様の創作を容易とし、その効率を向上させ、多くのパターンの組み合わせからなる複雑なものであっても、その創作を短時間に実行することができる優れた刺繍模様作成装置を提供することを目的とするものである。
本願発明の採用した手段は、刺繍模様を作成するための最小単位(例えば、a、b、cなどの文字)をパターンとしてとらえ、これを複数記憶し、その中から所望のパターン(例えばa、b)を選択し、選択した複数のパターンを互いに関係付け、その座標原点を定めてこれをグループとして定義し、このようにして定義した各グループについて、パターンの形態(大きさ、書体等)及び/又はパターン相互の位置関係(配列方向、間隔等)を決定し、これを定められた座標原点に従い二次元表示画面に表示し、これに基づいて一針データで刺繍を行う、というものである。
これに対し、引用例発明1は、複数の文字からなる刺繍模様を編集するに当たり、一つずつ文字を選択し拡大・縮小・移動・回転をさせるという、1文字(1パターン)ずつの編集しか行わないものであって、そこには、本願発明における、複数の文字を一つのグループとして関係付け、全体の拡大、縮小、移動、回転等の編集を行うという技術的思想は一切記載されていないし示唆もなされていない。
にもかかわらず、審決は、本願発明には1パターンずつ編集を行うものも含まれるものとして、本願発明の技術事項の認定を誤り、本願発明と引用例発明1との技術事項の差異を正確に把握しないまま本願発明との一致点・相違点の検討に及び、引用例発明1の装置が、「パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付けて、一つのグループとし、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段」と「グループに属する総てのパターンを、定められた座標原点に従い、前記形式決定手段により各グループについて決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段」(審決書6頁3~12行)とを備えているものとして、本願発明との一致点の認定を誤ったものである。
(2) 本願発明の要旨認定においては、
「C:グループ定義手段」=編集単位としてのグループを定義し、編集中心としてのグループ座標原点を定義する手段、
「D:形式決定手段」=グループ単位で編集する手段、
「E:表示制御手段」=グループ座標原点に従い、二次元表示画面において各グループに属するすべてのパターンの形態及び位置関係を把握して表示する手段、
「F:一針データ作成手段」=上記表示画面上に作成されたパターンの形態及び位置関係に基づいて、刺繍ミシンを実行する手段、
が有機的に結合しているものとして把握すべきである。
そして、「D:形式決定手段」について、本願発明の特許請求の範囲には、
「該グループ定義手段の定義した各グループについて」、
「該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を」、
「決定する形式決定手段」
と表現されている。
この「形式決定手段」について、その機能的表現部分をみると、冒頭に「該グループ定義手段の定義した各グループについて」とあることから明らかなとおり、「D:形式決定手段」は、「C:グループ定義手段」と密接な関係を有するものとして意図されているものと解すべきである。ここで、「~について」という用語の意味は、岩波国語辞典(甲第10号証)によれば、「~に関して。~を対象として。~ごとに」とされているように、形式決定手段の冒頭部分は、「グループに関して。グループを対寒として。グループごとに」といった意味を有しており、形式の決定は、「個々のパターン単位」ではなく、「グループ単位」で実施されるべきものであることを明らかにしている。
また、発明の詳細な説明の「作用」の欄には、
「形式決定手段C4は、グループ定義手段C3によって定義されたグループG毎に、グループGに属するパターンの形態、パターンpi相互の位置関係を決定する手段である」(甲第2号証6欄16~19行)
と説明されている。
したがって、「グループについて決定する」ということは、「グループ所属の複数のパターンについて決定する」ということであり、「グループに属するパターンの形態の決定」とは、「グループ所属の複数のパターンに対して、グループ単位に、統一的に、大きさ、書体等の形態が決定される」ものであると解釈すべきである。
そして、形式決定手段は、グループの座標原点に対してパターンの位置関係などをグループ単位で編集を行う手段を意味しており、本願発明は、グループを単位に編集するからこそ、「多くのパターンの組み合わせから複雑な刺繍であっても、その創作を短時間に実行できる」という効果を達成できる点に発明の本質が存在するものと解すべきである。
(3) さらに、「E:表示制御手段」について述べると、通常の画面への表示技術においては、画面の原点との直接的な位置関係に基づいて表示対象を画面上に表示していくのに対し、本願発明では、グループ所属の各パターンは、「自己の所属するグループ座標原点を基準」に表示される。そして、構成要件Eには明記はされていないが、グループ座標原点と画面の原点との間に何らかの関係が存在しなければ、各パターンを画面上に表示でき底いことは明らかである。
以上のことから、本願発明の構成要件Eは、間にグループ座標原点を介在させた、画面原点と間接的な位置関係として各パターンを画面上に表示する手段を意味している。そして、かかる表示制御を行うからこそ、グループ単位の編集が可能になるのである。
これに対し、引用例発明1における表示制御手段は、あくまでも各文字の文字原点C0と画面原点との直接的な関係によってパターンの表示を行っているのであり、本願発明のようなグループ座標原点を間に介在させた表示制御手段とは技術的に相違する。
したがって、審決の一致点の認定は誤りである。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)
審決は、本願発明と引用例発明1の相違点、すなわち、「本願の発明では、関係付けされた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段を具備し、グループ定義手段により定義された各グループを前記座標原点に従い表示するようにしているのに対して、甲第1号証(注、引用例1)記載の装置は、そのような構成を備えていない点」(審決書6頁17行~7頁3行)の判断に当たり、「甲第2号証刊行物(注、引用例2)には、複数の文字(パターン)を関係付け、関係付けた複数の文字(パターン)に対して配列の中心を定める基準点を設定して、一つの飾縫いパターンを作成することが記載されており、作成された飾縫いパターンは、前記華準点を座標原点とするパターンのグループということができるから、本願発明のグループ定義手段は、甲第2号証刊行物記載の技術を適用したにすぎないもので、その効果も格別のものではない。」(同7頁6~15行)と判断しているが、以下に述べるとおり、誤りである。
(1) 引用例2には「中心」あるいは「中心点」という語が記載されているが、これは「縫製の原点」又は「幾何学上の中心点」を意味するものにすぎず、本願発明にいう「グループ配列の基準点=グループの原点」を記載したものではない。しかるに、審決は、これを「パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付け、該関係付けた複数のパターンに対して少なくとも全体に座標原点(=グループの原点)を定めてグループとして定義する」という本願発明の「グループ定義手段」と同一視しており、重大な誤認がある。
引用例2には、グループに属する文字列の形式の決定に関する記載はあるものの、形式は、文字列を選択する前にしか決定されず、文字列を選択した後に形式を変更等する構成は一切記載されていない。すなわち、単に特定の文字を入力するだけで簡単に繰り返し設計を行いうるにすぎず、グループに含まれる文字パターンの総てを拡大・縮小したり、移動したり、回転したりする操作を簡単に行いうることを目的とするものではない。
また、引用例2では、液晶表示装置は単なる入力指示のためのものであることから、本願発明の一針データ作成手段、すなわち、「二次元表示画面上に作成されたパターンの形態及び位置関係に基づいて、刺繍ミシンの実行する一針データを作成する一針データ作成手段」について一切記載がないことも明らかである。
したがって、引用例発明2の奏する効果は、本願発明において、縫うための原点ではなく編集及び二次元表示のための原点をグループに対して一つ定義しておくことにより、編集作業に当たってどのような形式指示を行えばどのような配置等になるのかを容易に予測しつつ刺繍模様設計作業を行うことができる、という顕著な効果を奏するのとは、明らかに異なるものである。
(2) 審決は、引用例発明1に欠ける「グループ定義手段」は引用例2に記載されているから、本願発明のグループ定義手段は、引用例発明2の技術を適用したものにすぎないと判断しているが、引用例発明2は、「表示制御内容」に特徴のある本願発明及び引用例発明1との共通性がなく、表示を介して刺繍模様の設計作業を容易化しようとした本願発明について、何ら示唆するものがない。
本願発明は、前記のとおり、単なるグループ定義手段ではなく、形式決定手段、表示制御手段及び一針データ作成手段と密接に結びつき、縫うための原点ではなく編集・表示のための原点をグループ毎に定義することにより、刺繍模様の設計における作業の容易化を達成するものである。これに対し、引用例発明1も引用例発明2も、本願発明に特有の、「多くのパターンをCRT画面上の任意の位置に配置して所望の模様を表示したとき、数個のパターンからなる模様を一つの完成した小さな模様と考え、その小さな模様全体に反転、回転、拡大などの変更、修正などの加工を加えたい」という課題を示唆するものではないというべきである。
また、引用例発明1と引用例発明2とは、一般的な刺繍ミシンの縫目模様形成装置としての課題の共通性があるとしても、自由度の高い取扱いを意図して各パターンを独立に扱う引用例発明1と、繰り返し入力をなくすための様式の固定化を狙った引用例発明2とは、目的において相反するものがあり、これらを組み合わせることには無理がある。
以上のことから、引用例発明1と引用例発明2とを組み合わせる動機づけとなるものがないばかりでなく、両者を組み合わせても、本願発明の構成に至らないことは明らかである。また、本願発明は、上記各構成要素間の有機的な結合の結果、上記格別の効果を奏するものであって、引用例発明1と引用例発明2とを組み合わせただけで容易になしうるものでないことも明らかである。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1について
本願発明は、<1>パターン選択手段、<2>グループ定義手段、<3>形式決定手段、<4>表示制御手段、<5>一針データ作成手段の5つの手段を備えた刺繍模様作成装置であって、これらの5つの手段は、特許請求の範囲に記載された手段のとおりである。本願発明の要旨をグループ単位の編集手段に限定しようとする原告ら主張の解釈は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、失当である。
すなわち、特許請求の範囲の「D:形式決定手段」の構成は、「該グループ定義手段の定義した各グループについて、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段」とあるだけであって、グループ内のパターンの大きさ・形態と位置関係を決定すればよいのであり、どのように決定するかまでを規定したものではないことは明らかである。
したがって、本願発明の「形式決定手段」には、原告ら主張のような、グループ全体を一括して処理するという意味で、グループ単位で編集する場合も含まれるが、その他に、グループの各パターン毎に形式決定する場合も含まれることは、特許請求の範囲の記載から明瞭である。
また、本願明細書の「発明の詳細な説明」には、グループ単位で編集すればよいことも記載されているが、編集処理する模様の特定はグループ単位でも文字単位でもよいこと(甲第2号証25欄1~12行)、文字単位での傾斜角度等の変更が可能なこと(同27欄13~23行)、グループの全文字あるいは1文字のミラーイメージが変更できること(同28欄35~44行)が記載されており、グループ単位で一括して処理することを許容すると同時に、個々のパターン(文字)毎に形式決定することを排除しているものではないことを裏付けている。
そして、原告らが主張する本願発明の効果は、上記グループ単位で編集した場合の効果ではあるが、特許請求の範囲の構成に含まれるパターン毎に編集した場合の効果ではない。
一方、引用例1記載の刺繍ミシンは、<1>縫目形成手段、<2>布地保持手段、<3>駆動手段、<4>二次元的に模様を表示する表示部、<5>模様決定手段、<6>制御手段とを備えたものであって、<5>模様決定手段は、直線及び曲線より設定される幾何学模様を予め記憶した第1の記憶部と、この記憶した幾何学模様を選択する第1の選択部とを備え、さらに、予め決定されたパターンを記憶する第2の記憶部と、この記憶したパターンを選択する第2の選択部とを備えているものである。
引用例1には文字(パターン)の書体、大きさ、配列等を作成することが記載され、パターン毎に形式決定することが記載されている。したがって、引用例発明1が審決認定の形式決定手段をもつことは明らかである。
また、引用例発明1においては、二次元的に模様を表示する表示部は、「キーボード7からの入力情報に基づいた模様の創作や当該創作した模様の変更、修正等が行われると、該キーボード7により創作された実際に布地に形成される模様とほぼ同一のものを逐次操作者に視覚的に認識させるための二次元的な表示部」(甲第4号証3頁左上欄8~13行)であるから、入力されたデータの基づく模様は、カソード・レイ・チューブ(CRT)により逐次操作者(オペレータ)に視覚的に認識できるものである。したがって、引用例発明1が審決認定の表示制御手段を持つことは明らかである。
2 取消事由2について
引用例発明2においては、まず、どのような様式(例えば円弧)で縫うのかを決定し、次いでどのような文字群を縫うのかを入力するものであるが、この際、文字群は一つのグループとし、この文字群のグループと他の文字群のグループとを全部入れ替えて飾縫いできるようになっている。また、引用例発明2では、選択された文字と飾縫いパラメータとが結びついて飾縫いパターンができるが、選択された文字群は飾縫いパターンの中心ないし中央に基づいて配列されるから、この中心(中央)がグループの原点となり、飾縫いパラメータを変更する場合にはこの原点を中心として作図上の中心点からの距離などを変更するものである。
したがって、引用例発明2においても、本願発明と同様に文字群がグループ化され、そのグループの原点を定めているものであるから、本願発明でいうグループ定義手段と同じものが記載されている。
次に、引用例発明1と引用例発明2との組み合わせの容易性について述べる。
引用例1(甲第4号証)記載の刺繍縫いミシンは、「縫い目模様を操作者が正確に把握しつつ、模様の創作をする」ことを目的としており、しかも、その第6図には、文字グループの全体をCRTの画面に表示したものが示されており、これらの記載を総合的に勘案すると、引用例発明1には本願発明で使用するグループ定義手段の存在が示唆されている。
また、引用例2(甲第5号証)には、上記のとおり、本願発明でいうグループ定義手段と同じものが示されている。
そして、引用例発明1も引用例発明2も、刺繍縫い模様の創作が容易で、その時間を短くするということを目的としており、このような目的・効果を共通とするものである。
そうすると、引用例発明2のグループ定義手段を引用例発明1に適用することは、当業者にとって容易になしうることである。
第5 証拠
本件記録中の書証目録の記載を引用する。書証の成立については、いずれも当事者間に争いがない。
第6 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願発明の技術事項の認定の誤り、本願発明と引用例発明1との一致点の誤認)について
(1) 本願発明の技術事項の認定について
前示当事者間に争いのない本願発明の特許請求の範囲に記載されているとおり、本願発明における「グループ定義手段」とは、「該パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付け、該関係付けた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段」であり、「形式決定手段」とは、「該グループ定義手段の定義した各グループについて、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段」である。
原告らは、これに関して、「グループについて決定する」ということは、「グループ所属の複数のパターンについて決定する」ということであり、「グループに属するパターンの形態の決定」とは、「グループ所属の複数のパターンに対して、グループ単位に、統一的に、大きさ、書体等の形態が決定される」ものであると解釈すべきである旨主張する。
しかし、上記特許請求の範囲の記載のとおり、「形式決定手段」は、「該グループ定義手段の定義した各グループについて、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する」と一般的に規定されているにすぎないから、グループに属する複数のパターンは、原告ら主張のようなグループ単位で一括して統一的に形態が決定される場合のほか、各パターン毎に個々に形態を決定する場合を除外していないものといわなければならない。
確かに、原告ら主張の本願発明の目的を参酌すると、本願発明が原告ら主張のようなグループ単位の編集を意図したものであることは一応理解できるところである。
しかし、本願明細書(甲第2号証)の発明の詳細な説明の欄には、「形式決定手段C4は、グループ定義手段C3によつて定義されたグループG毎に、グループGに属するパターンの形態、パターンpi相互の位置関係を決定する手段である。パターンの形態とは、パターンpiの大きさや書体等をいい、パターンの位置関係とは、各パターンの配列方向(例えば縦配列、横配列、斜め配列、円弧状の配列等)や間隔(例えば文字間、行間等)、配列の方式(例えば刺繍を指定された地点にグループGの左端を揃えるのか、グループGの中央を揃えるのか等)等をいう。」(同号証6欄16~26行)との記載があり、この形式決定手段に属する刺繍模様を変更・修正する編集処理につき、「編集処理を施したい模様の特定が行われる。特定はグループ単位でも文字単位でもよく」(同25欄5~6行)と記載され、グループ単位の編集を行う場合にはコマンドページ「1」を、文字単位の編集を行う場合には同「2」を設定して行うことが記載されており(同25欄26行~26欄17行、図面35~40図)、幅変更につき「この文字編集処理では、上記したグループ編集処理と同様の幅変更の編集が各文字単位毎に行われ」(同26欄17~19行)、文字の拡大・縮小につき「この編集処理の実行によつて、該当グループやその中の文字を自由に拡大、縮小でき」(同27欄10~12行)、また、ミラーイメージの変更につき「特定したグループの全文字あるいは1文字のミラーイメージが変更される」(同28欄42~43行)と記載されている。
この記載からすれば、本願発明の形式決定手段は、グループ単位で一括して処理することを許容すると同時に、個々のパターン(文字)毎に形式決定することを排除しているものではないことが明らかであり、原告ら主張のような限定的な解釈をとることはできないといわざるをえない。
(2) 本願発明と引用例発明1との一致点の認定について
審決は、本願発明と引用例発明1とが、「パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付けて、一つのグループとし、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、グループに属する総てのパターンを、定められた座標原点に従い、前記形式決定手段により各グループについて決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段」(審決書6頁3~12行)を備える点で一致すると認定している。
しかし、当事者間に争いがない審決認定の引用例1の記載事項(審決書3頁15行~4頁19行)と引用例1(甲第4号証)によれば、引用例発明1においては、縫目模様形成に当たって、CRTの表示面で視覚確認しながら、キーボードの操作入力によって、パターン配列の基準となる幾何学模様による基準線を設定した後、文字の書体、縫い密度を規定するピッチ数を設定し、次いで、所望の文字を順次選択し、この選択した文字群の中から1文字だけを指定して、その文字の大きさを設定するとともに所望の位置に移動させ、必要に応じてその文字の基準点を中心に回転させ、この操作を順次上記選択した文字群の各文字について行い、これによって複数の文字パターンを上記所定の基準線に沿って配列して行き、最終的に該基準線に沿って配列したパターン模様を作成し、最後に各文字パターンの全縫い点と遊び点の座標を演算して縫目模様を作成するものであることが認められ、この事実によれば、原告ら主張のとおり、引用例発明1は、複数の文字からなる刺繍模様を編集するに当たり、一つずつ文字を選択し拡大・縮小・移動・回転をさせるという、1文字(1パターン)ずつの編集しか行わないものであり、また、文字の配列は、設定された幾何学模様による基準線に沿って行われるものであり、そこには、本願発明における、複数のパターンを一つのグループとして関係付け、座標原点を定め、グループ全体の拡大、縮小、移動、回転等の編集を一括して行うという技術的思想は一切記載されていないし示唆もされていないことが認められる。引用例1(甲第4号証)の図面第6図もこの認定を覆すに足りるものではない。
したがって、審決認定の本願発明と引用例発明1との一致点の認定は、本願発明におけるグループ定義手段に係わると認められる構成、すなわち、形式決定手段につき、「複数のパターンを互いに関係付けて、一つのグループとし、該グループに属する」とした点、表示制御手段につき、「定められた座標原点に従い」、「各グループについて」とした点において正確ではなく、両発明は、「パターン選択手段の選択した複数のパターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、総てのパターンを、定められた座標に従い、前記形式決定手段により決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段」の点で一致するとすべきであると認められる。なお、その余のパターン選択手段及び一針データ作成手段において、両発明が一致することは、当事者間に争いがない。
このように、審決の両発明の一致点の認定には、本願発明におけるグループ定義手段に係わると認められる構成をも取り入れて一致点としたことに不正確な点はあるが、審決は、両発明の相違点として、「本願の発明では、関係付けされた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段を具備し、グループ定義手段により定義された各グループを前記座標原点に従い表示するようにしているのに対し、甲第1号証(注、引用例1)記載の装置は、そのような構成を備えていない点」(審決書6頁17行~7頁3行)を挙げているのであるから、結局のところ、審決の上記一致点の認定はその実質において誤っているものということはできず、原告ら主張の取消事由1は理由がないことに帰するものというべきである。
そこで、以下、両発明の一致点を前示認定のものとして、審決の相違点についての判断の適否を検討する。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)について
(1) 引用例発明2について
引用例2に審決認定の記載事項(審決書4頁末行~5頁16行)があることは当事者間に争いがない。
この事実と引用例2(甲第5号証)によれば、引用例発明2は、「共通のパラメータを有する飾縫いすべき所望のキヤラクタのオペレータによる選択に基ずき複数のキーを有するキーボードを用いてキヤラクタを飾縫いする方法」(甲第5号証、特許請求の範囲)に関する発明であるところ、「本発明は、飾縫いのために文字を選択する都度作業者がキーボードを介して同じ飾縫いパラメータを入力する必要なく同じ所望の飾縫いパラメータを有する多数の文字を飾縫いすることができるようにする事を目論むもの」(同号証3頁左下欄4~9行)であり、「本発明によれば、反復的に飾縫いされるパターンを作業者もしくはオペレータが発生することができる飾縫い装置が提案され」(同4頁左下欄5~7行)、その効果として、「飾縫いパターンの発生に関連してオペレータの関与は軽減され・・・従来必要とされていた時間と比較し非常に短縮された時間で同じ飾縫いパターンまたは極く類似した飾縫いパターンを縫いつけることができる」(同5頁右上欄3~12行)効果を奏するものであり、これにつき、「ARC/LINEキーは、作業者もしくはオペレータをして3つの線フオーマツトの1つまたは2つの弧フオーマツトのうちの1つを選択することを可能にするキーである。弧フオーマツトを用いる場合には、作業者は、所望の中心点の回りに文字形成を心出しするために度数で定義される基準を設定することができる。オペレータはまた、弧フオーマツトを用いて、飾縫い方向即ち時計方向かまたは反時計方向かを選択することができる。同様にして、作業者はまた半径の値を選択する。この半径の大きさに従つて上記予め定められた中心から材料上に文字が飾縫いされる。」(同号証7頁左上欄下から2行~右上欄11行)との記載がある。
そして、引用例2の第3A図において、「Softba11」につき示されている様式が様式1であると記載され、その様式1について、第3B図を参照すると、弧フオーマットであり、その方向などとともに、中心からの半径の長さが示されていることが認められる。
以上の事実によれば、引用例発明2では、飾縫いパラメータと選択された文字とが結びついて飾縫いパターンができるが、選択された文字群は飾縫いパターンの中心ないし中央に基づいて配列され、この中心(中央)がグループの原点となり、例えば、弧フォーマットの半径の値を別の値に設定すれば、この原点を中心として、選択された文字群につき一括して作図上の中心点からの距離が変更できるものであると認められる。
したがって、引用例発明2においても、本願発明と同様に文字群がグループ化され、そのグループの原点を定めているものであるから、本願発明でいうグループ定義手段と同様のものが示されているものと認められる。
(2) 引用例発明1と引用例発明2の組み合わせの容易性について
本願発明と引用例発明1の一致点及び相違点が前示のとおりであり、引用例発明1は、本願発明のグループ定義手段を備えないものであるとはいえ、これを除いた構成において本願発明と一致し、この一致点に係る構成により、「布地上に形成する縫目模様を操作者が正確に把握しつつ、自由な模様の創作ができ」(甲第4号証2頁左下欄6~7行)、「操作者は自己の創作した模様と同一次元である二次元の模様表示部を常に認識して模様の創作が可能となり、所望の模様を簡単に布地上に形成できる」(同14頁右下欄12~15行)ものである。
そして、引用例2(甲第5号証)には、上記のとおり、本願発明でいうグループ定義手段と同様のものが示されているところ、引用例発明1も引用例発明2も、上記のとおり、刺繍縫い模様創作が容易で、その時間を短くするという面において、目的・効果を共通とするものである。
そうすると、引用例発明1について、前記の一致点の構成から、パターン自体の表現位置や大きさ、表示角度等を自由変化し、自己の創作に基づいた所望の模様を作成するに当たり、引用例発明2に示されたグループ定義手段を採用して、複数のパターンをグループ単位で一括して処理することとし、その作用・効果を向上、達成させることが、当業者にとって格別困難なことであるということはできない。
なお、本願明細書(甲第2号証)によれば、本願明細書に開示されている装置においては、グループ定義手段によって定義された複数のグループについて、そのグループを一つの単位として、グループ相互の位置関係を刺繍原点を基準にして移動させてその配置を決定する手段や刺繍原点を移動させる手段が開示されており(同号証29欄39行~30欄末行、図面第47、第48図)、この構成は、引用例1にも引用例2に開示も示唆もされていない構成であると認められるが、本願の特許請求の範囲には、この手段が本願発明の必須の構成として採用されていることを示す記載はなく、単に、各グループに属するパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、グループに属する全てのパターンをグループの座標原点に従い表示する表示制御手段をいうのみである。
したがって、この構成の有する作用効果をもって、本願発明の作用効果とすることはできない。
その他、本件全証拠によっても、審決の相違点についての判断を違法とする理由は見出せない。
取消事由2も理由がない。
3 以上のとおりであるから、原告ら主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告らの請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、93条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 芝田俊文 裁判官 清水節)
平成1年審判第2536号
審決
愛知県名古屋市東区徳川二丁目2番8号
請求人 株式会社 中日本システム
愛知県一宮市大字定水寺字塚越20番地
請求人 株式会社バルダン
愛知県名古屋市中区錦二丁目9番27号 名古屋繊維ビル
代理人弁理士 足立勉
昭和61年特許願第287548号「刺繍模様作成装置」拒絶査定に対する審判事件(平成2年1月11日出願公告、特公平2-1516)について、次のとおり審決する。
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
Ⅰ.本願は、昭和61年12月2日に出願されたもので、その発明の要旨は、出願公告された明細書と図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりの
「刺繍模様を構成する際の最小単位となる文字、記号等のパターンを複数記憶しているパターン記憶手段と、
該パターン記憶手段の記憶している複数のパターンの中から所望のパターンを選択するパターン選択手段と、
該パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付け、該関係付けた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段と、
該グループ定義手段の定義した各グループについて、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、
前記グループ定義手段により定義された各グループに属する総てのパターンを、前記定められた座標原点に従い、前記形式決定手段により各グループについて決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段と、
前記二次元表示画面上に作成されたパターンの形態および位置関係に基づいて、刺繍ミシンの実行する一針データを作成する一針データ作成手段と、
を備えた刺繍模様作成装置。」
にあるものと認める。
Ⅱ.前置審査において、特許異議申立人上野哲郎が提出した甲第1号証刊行物の特開昭60-119981号公報には、所望の縫目模様を作成し、縫製する刺繍ミシンにおいて、
幾何学模様、文字パターンを記憶するパターンROM13と、パターン選択手段と、操作者が模様の創作を行うため入力する多数のキーを有するキーボード7と、CPU10、制御ブログムを記憶するROM11、種々の演算結果等を一時記憶するRAM12とからなる制御手段と、機能表示部8aとキーボードからの入力に応じ創作された模様を二次元的に表示する模様表示部8bを有するCRT8と、CRTコントローラ16とビデオRAM17を有する表示制御手段とを備え、
縫目模様形成にあたって、CRTの表示面で視覚確認しながら、キーボードの操作入力によって、パターン配列の基準となる幾何学模様、文字の書体、縫い密度を規定するピッチ数を設定し、次いで、所望の文字を順次選択し、文字の大きさを設定するとともに選択された文字パターンを所望の位置に移動させ、必要に応じてパターンの基準点を中心に回転させることによって複数の文字パターンを所定の基準線に沿って配列したパターン模様を作成し、最後に各文字パターンの全縫い点と遊び点の座標を演算して縫い目模様を作成するようにした刺繍ミシンの縫目模様形成装置が記載されている。
同じく甲第2号証刊行物の特開昭60-246785号公報には、マイクロプロセッサ20と、キーボード28と、文字、特殊デザイン等を記憶するメモリ4850、52と、設定された飾縫いバタメータを記憶させる様式メモリ60と、作成された飾縫いパターンのプログラムを記憶させるプログラムメモリ64と、作業用メモリ58、62とを備え、キーボードからの入力により、字体、文字の高さ、文字間隔、縫い密度、文字幅、文字の傾斜、および文字の配列状態を規定するフォーマット、配列の中心を定める基準点、配列方向などの飾縫いパラメータを設定した様式を選択し、次いで、所望の文字を順次選択して、定められた様式と複数の文字によって構成される飾縫いパターンを作成し、これを繰返して複数の飾縫いパターンのプログラムを定め、プログラムメモリに記憶させるようにした飾縫い模様作成装置が記載されている。
Ⅲ.本願の発明と前記甲第1号証刊行物に記載された模様作成装置とを比較すると、両者は、刺繍模様を構成する際の最小単位となる文字、記号等のパターンを複数記憶しているパターン記憶手段と、該パターン記憶手段の記憶している複数のパターンの中から所望のパターンを選択するパターン選択手段と、該パターン選択手段の選択した複数のパターンを互いに関係付けて、一つのグループとし、該グループに属する前記パターンの大きさ、書体等の形態および/または各パターンの配列方向、間隔等のパターン相互の位置関係を決定する形式決定手段と、グループに属する総てのパターンを、定められた座標原点に従い、前記形式決定手段により各グループについて決定された形態および/または位置関係により、二次元表示画面に表示する表示制御手段と、前記二次元表示画面上に作成されたパターンの形態および位置関係に基づいて、刺繍ミシンの実行する一針データを作成する一針データ作成手段とを備えた刺繍模様作成装置。である点で一致している。
そして、本願の発明では、関係付けされた複数のパターンに対して少なくとも全体の座標原点を定めてグループとして定義するグループ定義手段を具備し、グループ定義手段により定義された各グループを前記座標原点に従い表示するようにしているのに対して、甲第1号証記載の装置は、そのような構成を備えていない点で相違している。
そこで、上記相違点について検討すると、前記甲第2号証刊行物には、複数の文字(パターン)を関係付け、関係付けた複数の文字(パターン)に対して配列の中心を定める基準点を設定して、一つの飾縫いパターンを作成することが記載されており、作成された飾縫いパターンは、前記基準点を座標原点とするパターンのグループということができるから、本願発明のグループ定義手段は、甲第2号証刊行物記載の技術を適用したにすぎないもので、その効果も格別のものではない。
そして、各グループをその座標原点に従い表示するようにすることは、表示制御に関する技術常識から当業者が容易に実施し得ることであるから、結局のところ、上記相違点は、甲第2号証刊行物に記載された技術事項から当業者が容易に推考し得るものというほかはない。
Ⅳ.以上のとおりであるから、本願の発明は、前記各甲号証刊行物に記載された技術から当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
平成5年4月30日
審判長 特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)